夫婦相互遺言作成のトラブルとは

夫婦相互遺言作成のトラブルとは

■夫婦には絆がありますが、破れてしまうと終わりです!

世の中に子供のいない夫婦は、数多くいます。

子供が欲しくてもできなかったり、敢えて作らなかったり、年齢的に難しい等のケースがあります。

いずれにせよ、子なし夫婦は先を見据えた行動が必要です。

終活の一環として、夫婦が各々遺言を作成しておくことで、争いやトラブルを回避することができます。

子なし夫婦は、夫あるいは妻が亡くなったとき、相続人となるのは、配偶者と直系尊属(父母)となります。

直系尊属がいなければ、兄弟姉妹が相続人となりますが、兄弟姉妹も亡くなっているとその子にあたる甥や姪が相続人となります。

そうすると、相続手続が非常に面倒なことになるのが事前に想定されます。

そこで、夫婦相互遺言として、夫と妻がそれぞれ、「私が亡くなったら、全財産を夫(妻)に全部あげます」という内容の遺言を遺しておけば、相続手続がスムーズになり、遺された方の負担軽減につながります。

そういう意味で、子なし夫婦にとって、夫婦相互遺言の作成は、大きなメリットがあると言えます。

以前、知人からの紹介で夫婦相互遺言の作成を依頼されました。

この夫婦はまだ50代でしたが、夫婦間でよく話し合って、将来のことを考えて、遺言書の作成を決めました。

ただし、夫が軽口な人で、飲み会に行くとずっとしゃべりっぱなしでした。

知人とよく飲みに行く仲間で、飲みに行くといつも「うちの奥さんは子宮の病気があって子供ができなかったんだ」と話すそうです。

子なし夫婦は、「どうして子供がいないの?」と聞かれることが多いので、その答えとして、先に自ら語っているのです。

遺言の内容を確認するため、知人が奥さんと話したときに、ひょんなことから子供ができなかった話になりました。

知人が奥さんの病気のことを夫からいつも聞いていると話したところ、奥さんは態度を豹変しました。

奥さんは「私は子宮の病気ではない」と言われたそうです。

あとで判明したのですが、この夫婦間に子がいない本当の原因は夫に問題があったということでした。

いわゆる無精子症のようです。

男のプライドもあったのでしょうが、夫はその事実を伏せるために、そのような虚偽を話していたのでした。

子供ができない原因については、夫婦間の問題であり、第三者が関与するものではありませんが、酒の席で話すような内容ではありません。

夫の嘘が原因で、夫婦間に大きな亀裂が走りました。

遺言作成どころではない状況となりました。

しばらく時間が経過した後、知人から連絡がありました。

遺言作成は中断して、離婚協議書の作成をお願いしたいとのことでした。

後日聞いた話としては、離婚後、夫はリストラされて、転職活動を行うも再就職できず、無職となり、今では単身生活をしているそうです。

妻は、再婚したようです。

元夫婦に明暗が別れる形となりました、

夫婦にも絆というものがありますから、それをむやみに破壊してしまう行為や発言は慎むべきであると言わざるを得ません。

軽口にも程があるということを自覚して、元夫は孤独の道を歩んでいくことでしょう。